概要
2025年8月、IRCNチームは米国ボストンを訪問し、研究室見学と共同シンポジウムにより国際的な学術交流を行った。歴史ある街並みと最先端の科学が共存するボストンの環境は、訪問団にとって大きな刺激となった。
研究室訪問とシンポジウム
Hanspeter Pfister研究室では、神経回路網の可視化や拡張現実(AR)を活用した研究を視察した。Lichtman研究室では3次元電子顕微鏡を用いたコネクトミクス研究を、Center for Brain Scienceではヒト・動物双方で利用可能なMRI施設を見学した。Boston Children’s Hospitalでは、Charles Nelsonの案内で臨床と研究が一体化した小児研究施設を見学し、Charles Berdeによる麻酔と発達の関係に関する講演を聴講した。
最終日には、ハーバード大学Northwest Buildingのホールで共同シンポジウムが開催された。ホール前のホワイエでは、両大学の若手研究者によるポスターセッションが行われ、活発な議論が交わされた。講演セッションでは、ハーバード大学と東京大学の8名の研究者が最新の成果を共有した。Mustafa Sahin(Boston Children’s Hospital)は結節性硬化症をモデルとした神経遺伝疾患研究を、後藤由季子(UTokyo)は神経成熟制御に関する成果を報告した。Paola Arlotta(Harvard SCRB)はヒト脳オルガノイド長期培養による細胞運命転換の再現を示し、渡部喬光(UTokyo)はエネルギー地形解析による脳状態ダイナミクス解析を紹介した。河西春郎(UTokyo)は新規シナプスケモジェネティック法を用いてシナプス可塑性が認知行動や覚醒状態のリアルタイム制御に寄与することを示し、内田直滋(Harvard MCB)は分布強化学習の神経基盤を提示し不確実性下での意思決定理解の新たな視点を示した。笠井清登(UTokyo)は脳画像研究やコホート研究の知見から環境要因が発達や精神症状に与える影響を示し、Catherine Dulac(Harvard MCB)は社会行動の視点から炎症によるオキシトシン作動性ニューロン活性化の関連を議論した。
分子から行動、ヒトから動物をつなぐトランスレーショナル研究の視点が各講演で共有され、いずれも今後のIRCNの研究の指針となる内容であった。
総括と今後の展望
今回の訪問を通じ、IRCNが目指す学際的チームサイエンスの方向性が再確認された。今後、共同研究や若手研究者の国際交流を一層推進し、IRCN内外で得られた知見を共有することで、次世代脳科学研究の発展に資することが期待される。
企画・運営にご尽力いただいたHanspeter Pfister、Charles Nelson、Charles Berde、Mustafa Sahin、Paola Arlotta、内田直滋、Catherine Dulacの各教授ならびにハーバード大学、日本学術振興会の皆様に心から御礼申し上げます。
詳細は英語版レポートをご覧ください。
レポート執筆者
陳 夢圓, Yi-Yuan Huang, 西尾 奈々, 岩﨑 奏子, 清田 正紘, 村井 翔太, 南學 正仁, 大葉 敦子, 澤田 健, 高橋 優輔, 龍海 暢輝



