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チャオ ジーナス

主任研究者

計算論的研究

特任准教授

「予測する脳」を支える大規模ニューラルネットワーク

研究概要

予測符号化の理論では、脳は感覚情報をあらゆる抽象化レベルで常に予測しながら更新し、また予測と実際の感覚入力が異なる場合にはその誤差信号を発信すると考えられています。この様式は知覚と行動を統一するモデルを作り出し、さらには統合失調症や自閉症などの精神疾患で起こりうる予測や誤差信号の不調との関連を提示することができます。私が現在着目している研究テーマは(1)異なる階層レベルで予測と予測誤差のもととなる脳信号を特定することにより理論を導きだし、(2)その理論を知覚と行動以外の認知領域に対しても一般化することです。異なる時空間情報がどのように調和してゆくのかを理解することで、ニューロモーフィックコンピューティングの開発や、脳疾患の予測や診断に有用な神経マーカーの同定に繋がることが期待されます。

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主要論文

Chao ZC, Takaura K, Wang L, Fujii N, Dehaene S (2018). Large-scale cortical networks for hierarchical prediction and prediction error in the primate brain. Neuron, 100, 1252-1266

Chao ZC, Sawada M, Isa T, Nishimura Y (2018). Dynamic Reorganization of Motor Networks During Recovery from Partial Spinal Cord Injury in Monkeys. Cerebral Cortex, bhy172.

Chao ZC, Nagasaka Y, Fujii N (2015). Cortical network architecture for context processing in primate brain.” eLife 4: e06121.

Fukushima M, Chao ZC, Fujii N (2015). Studying cortical circuits with electrocorticography in non-human primates: recent advances. Current Opinion in Neurobiology, 32, 124-131.

Chao ZC, Fujii N (2013). Mining spatio-spectro-temporal cortical dynamics: a guideline for offline and online electrocorticographic analyses. in Advanced Methods in Neuroethological Research, Hiroto Ogawa and Kotaro Oka, editors, Springer, 39-55.

Chao ZC, Nagasaka Y, Fujii N (2010). Long-term asynchronous decoding of arm motion using electrocorticographic signals in monkeys. Frontiers in Neuroengineering 3:3. doi:10.3389/fneng.2010.00003.

略歴

私は人間の心とは何かということにずっと興味を抱いてきました。人間に近い知性を持つマシンが実現するならば、そこに自由な意思や意識は宿るのでしょうか。私は、台湾の大学で生命科学ならびに化学を専攻し、その後米国ジョージア工科大学の博士課程において医用生体工学を学びました。博士論文では、ペトリ皿で培養した神経細胞をロボットに接続し、そのロボットが目的に適った行動を習得できることを実証しました。学位取得後に来日し、理化学研究所脳科学総合研究センター(BSI)にて研究員、国立生理学研究所にて助教、そして京都大学にて講師を務め、ヒトとサルの行動から脳シグナルを紐解き、脳がどのようにロボットやコンピュータを制御するのかを理解することに努めてきました。そして2019年9月、このIRCNに特任准教授として着任しました。ここでは、これまでに得たコンピューティング系実験スキル、培養系実験スキル、生体系実験スキルを活かし、「認知理論の統一的見解」をもたらす予測コーディングのエビデンスを探求したいと考えています。