2023年11月5日(日)に東京工業大学 70周年記念講堂にて、IRCNと東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)、東京工業大学地球生命研究所(ELSI)による第9回合同一般講演会「起源への問い」を開催しました。 合成生物学、バイオテクノロジー(松浦 友亮 WPI-ELSI (東京工業大学) 教授)、分子生物学(後藤由季子 WPI-IRCN (東京大学)主任研究者)、数学(戸田幸伸 WPI-Kavli IPMU(東京大学)教授)の専門家による講演が行われました。
後藤 由季子 東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構 (WPI-IRCN)主任研究者 「脳を創る幹細胞の運命制御」 |
後藤主任研究者は「脳を創る幹細胞の運命制御」というタイトルで脳と起源に関する講演を行い次のことを述べました。
私たちの脳は神経幹細胞が作り出すニューロンが繋がることで機能している。赤ちゃんの頃は脳を構築するため神経幹細胞が盛んに様々なニューロンを作り出すが、一定の期間が過ぎるとニューロンは生産されなくなる。これは特定のたんぱく質がニューロンの生産を抑制しているためであり、また、逆に神経幹細胞を若返らせてニューロンを再び生み出すようにするたんぱく質の存在も明らかになっている。このように神経幹細胞がニューロンを作り出すメカニズムの研究を応用することで患者の細胞からiPS細胞を経て人工的にニューロンを作り出し疾患のメカニズムの解明や治療へと繋げることも期待できる。
大人の脳には赤ちゃんの頃から大人になるまで時間をかけてゆっくりと分裂し、生涯にわたりニューロンを生み出し、脳の機能を維持している成体神経幹細胞が存在する。成体神経幹細胞は毎日多くのニューロンを新しく生み出すという報告があり、記憶や学習、ストレスからの回復に重要な役割を果たしている。しかし老化や過大なストレスを受けると新生ニューロンの数は減少してしまう。成体神経幹細胞がゆっくり分裂するよう操作しているたんぱく質を制御することにより、老化が進んでも新生ニューロンを必要な時に一時的につくりだせるようにすることが期待される。
【鼎談】
「起源を問うとはどういうことか」
山本貴光(モデレーター)
東京工業大学 科学技術創成研究院・リベラルアーツ研究教育院 教授
講演後は文筆家・ゲーム作家である山本貴光教授(東京工業大学 科学技術創成研究院・リベラルアーツ研究教育院)をモデレーターに迎えて鼎談を実施しました。
会場とオンライン合わせて849名の参加があり盛会のうちに終了しました。