研究者画像

長井 志江

特任教授

人間の知能の理解と支援を目指す認知発達ロボティクス

研究概要

人間の乳幼児は生後数年の間にさまざまな認知機能を獲得します。しかし、脳がどのようにして多様な能力を獲得していくのかは,まだ明らかになっていません。私たちは、脳の本質的機能とされる予測符号化の理論に基づき、人工神経回路モデルとロボットを用いた構成的アプローチから、認知発達を支える神経基盤の理解を目指します。予測符号化とはボトムアップな感覚信号と内部モデルによるトップダウンな予測信号の誤差、つまり予測誤差を最小化するように、内部モデルの更新と能動的推論を行う情報処理です。私たちはさまざまな感覚運動学習に本理論を応用することで、発達の非線形な変化や発達障害といった個性を統一的に説明する枠組みを提案しています。そして本研究で得られた知見を、発達障害者のための支援技術の開発に応用します。これまでの支援技術とは異なり、計算論的手法を応用して発達障害者の認知過程を見える化することで、当事者の自己理解の促進とそれに伴う社会性の向上を目指します。

研究テーマ画像

主要論文

Nagai, Y.: Predictive Learning: Its key role in early cognitive development. Philosophical Transactions of the Royal Society B, in press.

Horii, T., Nagai, Y., and Asada, M.: Modeling Development of Multimodal Emotion Perception Guided by Tactile Dominance and Perceptual Improvement. IEEE Transactions on Cognitive and Developmental Systems, 10(3):762-775, 2018.

Baraglia, J., Nagai, Y., and Asada, M.: Emergence of Altruistic Behavior Through the Minimization of Prediction Error. IEEE Transactions on Cognitive and Developmental Systems, 8(3):141-151, 2016.

Ugur, E., Nagai, Y., Sahin, E., and Oztop, E.: Staged Development of Robot Skills: Behavior Formation, Affordance Learning and Imitation with Motionese. IEEE Transactions on Autonomous Mental Development, 7(2):119-139, 2015.

Nagai, Y. and Rohlfing, K. J.: Computational Analysis of Motionese Toward Scaffolding Robot Action Learning. IEEE Transactions on Autonomous Mental Development, 1(1):44-54, 2009.

Nagai, Y., Hosoda, K., Morita, A., and Asada, M.: A constructive model for the development of joint attention. Connection Science, 15(4):211-229, 2003.

略歴

1997年青山学院大学理工学部卒業、1999年同大学大学院理工学研究科博士前期課程修了、2004年大阪大学大学院工学研究科、博士(工学)取得。情報通信研究機構けいはんな情報通信融合研究センター専攻研究員、ビーレフェルト大学ポスドク研究員、大阪大学大学院工学研究科特任准教授、情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター主任研究員などを経て、2019年4月に東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構特任教授に着任。計算論的アプローチから人間の社会的認知機能の発達原理を探る、認知発達ロボティクス研究に従事。2016年12月よりJST戦略的創造研究推進事業(CREST)「認知ミラーリング」の研究代表者を務める。