2020年1月12日、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の第8回サイエンスシンポジウム「数学の驚くべき力 数学が繋ぐ多様な世界」が開催されました。

このなかでIRCNにて計算論的研究ユニットを率いる合原一幸副機構長による講演、『脳の数学、数学の脳』が行われました。
講演のなかでまず合原副機構長は人工知能、AIの研究にベースとなっているニューラルネットワークのお手本は人間の脳であることから、脳科学・神経科学、特に脳の発達過程をきちんと見ることがとても重要であり、その理解を踏まえたものをAIの開発に活かすことがIRCNの存在意義であると説明しました。

またこれまでの研究に関して、大脳皮質において高次機能を担っていると思われるニューロンの特性を数学的に表現しさらにアナログの集積回路に実装してきたこと、その際の1つ1つのニューロンは3ナノワットの電力しか使わないので脳と同じ数と考えられる1000億実装しても300ワットという少ない電力で情報処理ができるものであることから、現在企業と共同でニューロチップ等の開発も進めているという話がありました。
さらには脳の機能として数学を考える活動部位と言語を考える活動部位はほとんど重ならないので数学は脳にとっては自然言語とは違うというデータもあり、今後の研究で脳の活動と数学の情報処理の関係も見えてくるのではということでした。

最後に合原副機構長はニューロインテリジェンスのコンセプトの1つとして、これからAIが生活に入ってくるため、脳とAIがどう共存しどう協同作業できるかということを追究いきたいと説明し、まだAIはノイズがはいると画像を誤認識することがあるため、自動運転が普及するには青信号を赤信号と、人間を他のものと誤識別させるノイズを解明していくことも必須との話をし、詰めかけた多くの参加者は時に感嘆の声を上げながら聞き入っていました。

講演の間にはWPIの13の拠点のブース展示も行われ、IRCNのブースにも中高生を含む多くの方に足を運んでいただきました。IRCNの研究内容はもちろんですが、次世代AIの開発や精神疾患の解明等、IRCNが掲げる目標への期待を強く感じました。

ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。