2019年3月20日(水)にIRCNと東京大学生産技術研究所、理化学研究所革新知能統合センターは、ファッションを通じて人間知能と人工知能(AI)の相互作用が生み出すニューロインテリジェンスという新しい研究分野の可能性を考えるシンポジウムを開催しました。

シンポジウムに先立ち、AIと共生する“未来のファッションの可能性を模索する”というコンセプトのもと、ファッションデザイナーエマ理永氏のコレクションが開催されました。
今回のコレクションは、美意識や感性など人間の脳の特有な能力に密接に関係しているファッションという分野において、AIとヒトがどこまで共生できるかというチャレンジから始まっています。

AIにエマ理永氏のこれまでのコレクション500体を学習させて生み出されたデザインをそのまま立体化したドレスや、AIによって創り出された画像をもとにエマ理永氏がさらにデザインをしたもの、さらには最先端の人工神経細胞に刺激を与えたときに出る電気信号の波形を元にしたものなどが発表されました。

コレクションの最後にエマ理永氏と今回のコレクションの技術面をリードしたIRCN合原一幸主任研究者がランウェイを歩くと会場を埋め尽くした来場者から盛大な拍手が送られました。

シンポジウムではドレス制作に使われた深層学習や人工ニューロンについての講演が行われました。画像を作る生成ネットワークと画像の真贋を判定する識別ネットワークという2つのニューラルネットワークのシステムによって新しい画像を創る敵対的生成ネットワーク(GAN) についてや、ある画像を別の画像の画風に変換する技術についての説明がありました。

その後のパネルディスカッションでは合原教授や杉山将IRCN主任研究者、哲学が専門の小林康夫東京大学名誉教授、ファッションジャーナリストの麦田俊一氏、エマ理永氏などによる討論が行われました。主にAIとヒトの脳についての議論が行われ、合原教授からは数学と言語では脳の中で活性化する場所が異なり、数学は感性とは対立せず、ファッションと似たようなものがあることも今回のコラボレーションにつながったという考えが、杉山教授からは今後のコレクションに向けてはエマ理永氏の好みを人工知能に学習させることで、創作活動を手助けするツールとして人工知能が活用できるのではないかという提案が出されました。



関連動画
『2019秋冬エマ理永コレクション エマ理永×AI(人工知能)』(Amazon Fashion Weekより転載)