2019年1月20日(日)に、日本科学未来館 未来館ホールにて、IRCN、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)、東京工業大学地球生命研究所(ELSI)の合同一般講演会「起源への問い」を開催しました。 
まず合成生物学(車兪澈ELSI特任准教授)、言語脳科学(酒井邦嘉IRCN主任研究者)、数学(中島啓Kavli IPMU主任研究者)の専門家による講演が行われました。

人間の知性の前提は言語能力であり、言語能力を基礎としてサイエンスが出来あがってきたこと、文法を使うことこそが人間の創造性の源泉であり知性のエンジンであること、言語は2つの要素を結びつける併合という操作を再帰的に繰り返すことで文章が作られるという点でフラクタルであり、幾何学的要素もあるといった酒井教授の講演に、300人近い参加者は時に感嘆の声を上げながら聞き入っていました。その講演後には人工知能AIの限界についての質問があり、それに対して、将棋のようにただ勝つという目的のためのAIと言語の評価は全く異質のもので、言語にある話し手の意味や意図を推し量るところが抜けているため、まだ難しいのではとの説明がありました。

3人の講演の後、心の哲学の専門家である東京大学大学院総合文化研究科の信原幸弘教授をモデレーターに迎えて鼎談を実施しました。「どこから来て」という起源があるならば、「どこへ行くのか」という運命もあるという議論のなかで、酒井教授からは運命を語ることはサイエンスにはなじまない、これまでの歴史を知ることとサイエンスを混同せず、しかし人と自然を分けすぎずに未来を考えることに意味があるのではないか、という考え方が出されました。
最後に行われた来場者との懇談会は講師を囲む来場者で別会場が埋め尽くされるほどの盛況となりました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。