2022年3月14日、河西春郎主任研究者が学術上特にすぐれた論文、著書その他の研究業績に対して表彰される恩賜賞・日本学士院賞を授賞いたしました。

【研究題目】
大脳シナプスの形態可塑性法則の発見

【授賞理由】
大脳の神経細胞間の興奮性結合を担うスパインシナプスが、学習に伴って素早くその形態と機能を変えることを発見し、スパイン形態やその運動と脳機能や精神疾患との関連を明らかにしました。まず、2光子励起顕微鏡をケイジドグルタミン酸に適用して、スパイン形態が機能と強く連関すること、刺激によりスパイン形態が長期増大してシナプス機能も持続的に増強することを見出しました。このスパイン形態増大過程において、増大の力は筋肉の収縮力に匹敵し、BDNFやタンパク質合成が関係し、ドーパミンの強い修飾を受けることを示しました。また、頭部増大の速い相では、スパインは軸索終末を力学的に押しその機能を20分間増強すること、更に自発的な揺らぎ運動によりスパインは生成消滅を起こし、この過程がスパイン体積分布を決めていることを明らかにしました。このように、河西氏は大脳のシナプスが化学伝達を担うだけでなく、形態可塑性法則に従って運動することを見出し、この分野の発展に世界的な貢献をしました。

【関連リンク】
恩賜賞・日本学士院賞(日本学士院ウェブサイト)
https://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2022/031401.html
河西研究室 
https://www.bm2.m.u-tokyo.ac.jp/