このたび、東京大学、帝京大学、理化学研究所の3機関の包括的な教育・研究連携を推進するために、それぞれの機関から東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)、帝京大学先端総合研究機構(ACRO)、理化学研究所脳神経科学研究センター(理研CBS)の3者が協力し、脳神経科学アライアンス(Alliance for Brain Science)を立ち上げることになりました。
 その連携の第一歩として、2024年度から「アスリート認知神経科学プログラム」を開始します。このプログラムは、熟達競技者の意識とパフォーマンスの関係を認知神経科学の切り口で追究する新研究領域を開拓し、イップスの理解を深めて治療法開発を目指すとともに、その成果をパラアスリートやシニアアスリートの支援に活用し、リハビリテーションと AI 開発などへの応用を目指すものです。こうした取り組みを契機に、今後、東京大学、帝京大学、理化学研究所の包括的な連携体制の下で様々な事業が展開してゆきます。

開催日時:2024年10月29日(火)13:00-17:20
会  場:東京大学福武ホール(本郷キャンパス)
参加登録:定員150名 参加費無料 要事前登録

プログラム 
司会:木村昌由美
東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN) 事務部門長

開会のあいさつ「 脳神経科学アライアンス設立に寄せて」

13:00 東京大学 齊藤延人 理事・副学長
13:05 帝京大学 冲永寛子 常務理事
13:10 理化学研究所 宮園浩平 理事
13:15 脳神経科学アライアンス覚書調印
 帝京大学先端総合研究機構(ACRO) 浅島誠 機構長
 理化学研究所脳神経科学研究センター(理研CBS) 影山龍一郎 センター長
 東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN) ヘンシュ貴雄 機構長



第1部 使用言語:英語(同時通訳有)
研究紹介

座長:大木研一、後藤由季子
東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN) 副機構長

13:30 講演① 小鳥の歌制御と聴覚フィードバック 岡ノ谷一夫
帝京大学先端総合研究機構(ACRO) 複雑系認知研究部門 教授
14:10 講演② 獲得した技能の保持・発展を支える脳の仕組み 柴田和久
理化学研究所脳神経科学研究センター(理研CBS) 人間認知・学習研究チーム チームリーダー
14:50 講演③ 神経科学的な対イップス戦略 渡部喬光
東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN) 主任研究者・准教授
15:30 コーヒーブレーク


第2部 使用言語:日本語(同時通訳有)
特別対談・講演

座長:飯野正光
東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN) 機構長特別補佐

15:50 特別対談 プロゴルファーとイップス
大江香織(プロゴルファー)、 中島和也(プロゴルファー)
16:30 休  憩
16:35 特別講演 多様化する学生意識へのアプローチ 岩出雅之
帝京大学スポーツ局長 (帝京大学ラグビー部元監督)
17:15 閉会挨拶 合原一幸
東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)
IRCNエグゼクティブ・ディレクター



参加登録受付は定員に達したため終了いたしました。
多数のお申し込みをいただきありがとうございました。

参加登録終了



第1部 13:00–15:30


脳の謎に挑む3つの研究機関の科学者が、それぞれの専門分野によるアプローチで、脳の仕組みやイップスが起きるメカニズムを探ります。



小鳥の歌制御と聴覚フィードバック

岡ノ谷一夫
帝京大学先端総合研究機構(ACRO)複雑系認知研究部門 教授

鳥は求愛の歌を親から学びます。ジュウシマツが正確な歌をうたうためには、常に聴覚フィードバックが必要です。この点で、ジュウシマツの歌の学習と維持は人間のスポーツで必要とされる制御過程と類似しています。ジュウシマツの歌の可塑性と聴覚フィードバックの役割について、およびその電気生理学的・組織化学的解析について説明し、運動の時系列制御について考察します。

プロフィール:栃木県足利市生まれ。慶応義塾大学文学部卒業後、米国メリーランド大学心理学研究科にて博士号(生物心理学)を取得。上智大学、農林水産省、慶応義塾大学研究員を経て、1994年より千葉大学助教授。2004年より理化学研究所チームリーダー。2011年より東京大学教授。2022年より現職。ルネッサンス・バロック期の音楽を趣味とする。





獲得した技能の保持・発展を支える脳の仕組み

柴田和久
理化学研究所脳神経科学研究センター(理研CBS)人間認知・学習研究チーム チームリーダー

技能の学習は、訓練にとどまらないダイナミックなプロセスです。獲得した技能は、訓練後も脳内で安定化、強化、再活性化といった状態を遷移します。この状態遷移が、獲得した技能の保持や発展を支えています。本講演では、視覚と運動の技能を題材に、技能の保持や発展を支えるヒトの脳の仕組みに関するわれわれの研究を紹介します。

プロフィール:2008年に奈良先端科学技術大学院大学で博士号(理学)取得。国際電気通信基礎技術研究所・ボストン大学・ブラウン大学で博士研究員、名古屋大学で准教授、量子科学技術研究開発機構で主幹研究員を経て、現在理化学研究所脳神経科学研究センターでチームリーダーとして人間認知・学習研究チームを主宰。





神経科学的な対イップス戦略

渡部喬光
東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN) 主任研究者・准教授

イップスは、これまでは確実にできていた比較的簡単な運動動作が何かのきっかけで急にできなくなるという症状です。状況依存的に起こることが多く、主に熟練したアスリートで見られます。本講演では、この競技者のパフォーマンスに大きな影響を及ぼすことも多いイップスの症状を少しでも軽減させるにはどうすればいいのかについて、神経科学的に考えうるアプローチの一つをご説明します。

プロフィール:東京大学医学部医学科卒業後、精神科外来をしつつ、ヒトの高次認知機能の神経基盤ついての研究に従事。同大学大学院博士課程修了後、マリーキュリー・リサーチフェロー(UCL)、理研CBS副チームリーダー等を経て2020年4月から東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構・准教授。





第2部 15:50–17:20


イップスを経験しているプロゴルファーによる対談に加え、「全国大学ラグビー選手権」においてチームを9連覇に導いた名指導者が講演します。





特別対談
プロゴルファーとイップス


大江香織(プロゴルファー)
プロフィール:1990年4月5日生まれ(34歳) 山形県出身
アマチュア時代には東北アマチュア・東北ジュニア選手権に優勝、世界アマチュア女子日本代表に選出。18歳の時、イップスに悩み、長尺パターを使い始める。2009年プロ入り、2011年初シード、2012年ツアー初優勝。2013年ゴルフ規則でアンカリングの禁止が決定、新しいパッティングスタイルを編み出し克服。2016年ツアー2勝目、2018年ツアー3勝目、2019年ツアーから引退。現在、ゴルフトーナメント解説やレッスンで活躍中。



中島和也(プロゴルファー)
プロフィール:1963年群馬県桐生市生まれ。
2歳からゴルフを始め、ジュニア、アマチュア時代には日本代表としても活躍。
1987年秋プロテストトップ合格。1988年プロデビュー戦となる第一不動産カップで優勝。2006年~2019年の間、(一社)日本ゴルフツアー機構にてツアーディレクターとしてトーナメントを支える側として活躍。2020年よりゴルフ場経営に就く。







特別講演
多様化する学生意識へのアプローチ



岩出雅之
帝京大学スポーツ局局長、スポーツ医科学センター副センター長・教授、ラグビー部元監督

大学スポーツ界において、従来の厳しい上下関係を脱却し、自律型人材の育成を目指す新たな組織マネジメントを導入しました。このアプローチは、学生のプレー面だけでなく、自己成長や自己実現を促進し、心理的安全性を重視した環境を提供します。学生が主体的に目標設定や問題解決に取り組み、チームの一員として役割を果たしながら自己成長を遂げることをサポートしています。本講演では、指導者が多様化する学生のニーズに柔軟に対応する方法を紹介します。

プロフィール:1976年和歌山県立新宮高等学校卒、1980年日本体育大学卒、1980年~1996年滋賀県公立学校教員、1996年~2022年帝京大学ラグビー部監督、現在帝京大学スポーツ局局長、スポーツ医科学センター副センター長・教授




イップスとは?


イップスは熟練者が定型的な動きがなぜかできなくなる状態を指し、意識と運動動作の対立が原因と考えられています。長く練習を積んだアスリートなどで見られ、ゴルフのパターや野球の送球、ラグビーのプレースキック時に起こるイップスはしばしば話題となります。イップスのメカニズムを解明できれば、その克服に繋げる可能性を拓き、私たちの意識と身体がどのように関係しているのかという、根源的な謎への理解に近づくことが期待できます。


参加登録受付は定員に達したため終了いたしました。
多数のお申し込みをいただきありがとうございました。

参加登録終了




アクセス
会場 東京大学(本郷キャンパス)福武ホール
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1

最寄り駅からのアクセス
・本郷三丁目駅(地下鉄丸ノ内線)より徒歩8分
・本郷三丁目駅(地下鉄大江戸線)より徒歩7分
・湯島駅(地下鉄千代田線)より徒歩20分
・根津駅(地下鉄千代田線)より徒歩16分
・東大前駅(地下鉄南北線)より徒歩10分


お問合せ
science-event*ircn.jp
*を@に置き換えてお問合せください。


共催:
東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)
帝京大学先端総合研究機構(ACRO)
理化学研究所脳神経科学研究センター(理研CBS)
後援:日本ゴルフ協会


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