2023年11月23日、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の第12回サイエンスシンポジウム「インフォマティクスを活用した研究の最前線 ~情報を味方につけたトップレベル研究~」が北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)にて開催されました。

午前の部でIRCNの長井志江主任研究者が「ロボティクスが解き明かす知能の原理」の講演を行い次のことを述べました。


長井 志江
東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構
(WPI-IRCN)主任研究者
「ロボティクスが解き明かす知能の原理」

人の脳は、環境や身体などの感覚器から受け取る信号と、過去の知識や経験を基に予測した信号を統合して、環境認識や運動生成を行っています。
例えば、2~8歳の子供に物体の一部だけが描かれた6枚の絵を見せて、好きなものを描き足してもらう実験をすると、年齢が上がるにつれて足りない特徴をうまく描き足すようになりました。また提示された絵を無視して、いつも同じ絵を描く多様なパターンも見られました。
この発達的変化が脳の予測機能によって生じていることを実証するため、感覚信号と予測信号を統合する機能を搭載した人工ニューラルネットワークモデルを設計し、子供と同じお絵かき実験をロボットで行いました。その結果、感覚信号と予測信号の強弱を変えることによって、子供のお絵かき実験に見られたような多様なパターンを再現することができました。
このように人の脳をシミュレートする人工知能を開発し、人の脳の発達や個人の多様性を説明できるようになれば、多様な脳の仕組みを理解することができるようになります。これにより、人が持つ認知機能の多様性への相互理解を促進させインクルーシブ社会の実現に貢献したいと考えています。

会場は中高生のお子さんと親子で参加する方や友人と一緒に聴講している学生も見られ、若い世代を含むたくさんの方であふれていました。


【ブース展示】


透明化したマウスの脳を観察する参加者


WPI全18拠点によるブース展示が行われ、多くの方にIRCNのブースに来ていただきました。透明化したマウスの脳を初めて観察し驚きながら見入る方、人工知能とデザイナーのコラボレーションにより生まれたドレスの映像を熱心にご覧になる方、講演を聞いて脳科学研究への興味が増してブースを訪れてくださった方など中高生から大人まで様々な年代の方がIRCNの研究に注目するきっかけとなりました。