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上田 泰己

主任研究者

技術開発

東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻システムズ薬理学 教授

個体レベルでのシステム生物学の実現と、それを応用した哺乳類にみられる3つの脳状態の理解

研究概要

個体レベルのシステム生物学の実現と哺乳類脳の3つの状態(NREM睡眠、REM睡眠、覚醒)の理解への応用を目指しています。分子ネットワークや細胞回路をシステムレベルで同定し解析するためには、次世代の遺伝学ともいうべき技術が必要不可欠です。次世代遺伝学とは、ゲノム改変動物を交配を経ずに作成することができる遺伝学と定義されます。私達は、1つの遺伝子に対して3つのガイドRNAを設計し、それらを3分の1の低濃度で用いることで、第一世代における完全なノックアウトマウスの作製効率を劇的に改善し、96%~100%にまで高めることを発見しトリプルCRISPR法と名付けました。また、3つの阻害剤を用いて培養したES細胞を8細胞期の初期胚にインジェクションすることで、全身のほぼ全ての細胞がES細胞由来の細胞からなるマウス(ESマウス)を第一世代で作成するESマウス法を技術的に確立し、ノックインマウスを効率的に作成することに成功しています。さらに、これらの技術によって作製されたノックアウトマウスおよびノックインマウスの臓器を一細胞解像度で解析するため組織透明化法CUBICを発明し、最先端の光シート顕微鏡と組み合わせることで実現しています。これらの技術を応用することで、カルシウムやその下流のリン酸化酵素CaMKIIα/βが、ノンレム睡眠の制御に重要な役割を果たしていることや、2つのムスカリン受容体(M1およびM3)がレム睡眠の制御に必須遺伝子であることを発見しています。さらなる応用により、我々の知性を支える3つの状態(NREM睡眠、REM睡眠、覚醒)のより深い理解に貢献することが期待されます

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主要論文

Niwa Y, Kanda GN, Yamada RG, Shi S, Sunagawa GA, Ukai-Tadenuma M, Fujishima H, Matsumoto N, Masumoto K, Nagano M, Kasukawa T, Galloway J, Perrin D, Shigeyoshi Y, Ukai H, Kiyonari H, Sumiyama K, Ueda HR, Muscarinic acetylcholine receptors Chrm1 and Chrm3 are essential for REM sleep, Cell Reports. in press.

Murakami TC, Mano T, Saikawa S, Horiguchi SA, Shigeta D, Baba K, Sekiya H, Shimizu Y, Tanaka KF, Kiyonari H, Iino M, Mochizuki H, Tainaka K, Ueda HR. A three-dimensional single-cell-resolution whole-brain atlas using CUBIC-X expansion microscopy and tissue clearing. Nat Neurosci. 2018 Apr;21(4):625-637.

Shinohara Y, Koyama YM, Ukai-Tadenuma M, Hirokawa T, Fujishima H, Umehara T, Tainaka K, Ueda HR. Temperature-Sensitive Substrate and Product Binding Underlie Temperature-Compensated Phosphorylation in the Clock. Molecular Cell. 2017 Sep7;67(5): 783-798

Tatsuki F, Sunagawa GA, Shi S, Susaki EA, Yukinaga H, Perrin D, Sumiyama K, Ukai-Tadenuma M, Fujishima H, Ohno R, Tone D, Ode KL, Matsumoto K, Ueda HR. Involvement of Ca(2+)-Dependent Hyperpolarization in Sleep Duration in Mammals. Neuron. 2016 Apr 6;90(1):70-85.

Tainaka K, Kubota SI, Suyama TQ, Susaki EA, Perrin D, Ukai-Tadenuma M, Ukai H, Ueda HR. Whole-body imaging with single-cell resolution by tissue decolorization. Cell. 2014 Nov 6;159(4):911-24.

Susaki EA, Tainaka K, Perrin D, Kishino F, Tawara T, Watanabe TM, Yokoyama C, Onoe H, Eguchi M, Yamaguchi S, Abe T, Kiyonari H, Shimizu Y, Miyawaki A, Yokota H, Ueda HR. Whole-brain imaging with single-cell resolution using chemical cocktails and computational analysis. Cell. 2014 Apr 24;157(3):726-39.

Ukai-Tadenuma M, Yamada RG, Xu H, Ripperger JA, Liu AC, Ueda HR. Delay in feedback repression by cryptochrome 1 is required for circadian clock function. Cell. 2011 Jan 21;144(2):268-81.

Ueda HR, Chen W, Adachi A, Wakamatsu H, Hayashi S, Takasugi T, Nagano M, Nakahama K, Suzuki Y, Sugano S, Iino M, Shigeyoshi Y, Hashimoto S. A transcription factor response element for gene expression during circadian night. Nature. 2002 Aug 1;418(6897):534-9.

略歴

1975年福岡県生まれ。2000年東京大学医学部卒業、2004年同大大学院医学系研究科修了。 2003年から理化学研究所にてシステムバイオロジー研究チームのチームリーダー、2009年からプロジェクトリーダー、2011年から生命システム研究センターのグループディレクターを経て2013年より東京大学大学院医学系研究科 教授。現在、理化学研究所・生命機能科学研究センター・チームリーダー、東京大学大学院情報理工学研究科・システム情報学専攻教授(兼担)、東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構主任研究者(兼担)、大阪大学客員教授などを兼務。「細胞を創る」研究会 会長(2008年)。 さきがけ「細胞機能の構成的な理解と制御」研究領域総括(2011年―2018年)。時間生物学会大会長(2015年)。日本学術会議 若手アカデミー代表(2015年―2018年)。日本イノベーター大賞・優秀賞(2004年)、東京テクノフォーラム21・ゴールドメダル(2005年)、文部科学大臣賞 若手科学者賞(2006年)、日本IBM科学賞(2009年)、日本学術振興会賞(2011年)、塚原仲晃記念賞(2012年)、第15回山崎貞一賞(2015年)、第4回イノベーター・オブ・ザ・イヤー(2017年)、第50回 市村学術賞功績賞(2018年)等を受賞。